その嘘に踊れ


それと同時に、こうも思う。

コイツはナイな、と。
謎の『何者か』とか、あり得ねェな、と。

だって本能のままだもん。

人目も気にせず、声を上げて走り回っちゃってさ。

その行動に、教え込まれたマニュアルなんてない。
後ろめたいコトをしている人間特有の、暗い影もない。

ほんと自由だもん。


(なんか… 楽しい、な)


アオは、自分の手をシッカリと握りしめて走るデイジーの横顔を、レイバンの奥からチラリと盗み見た。

本人は必死の形相だし、こんなコト思っちゃ不謹慎なのかも知ンないケド。

同じ追われて逃げるのでも、こんなに楽しいモノなンだ。

自分の意志なら。
心が自由なら。

全く…
羨ましいったらねェな。

走るデイジーに、アオは着いていく。

裏道に入って。
角という角をクネクネと曲がって。
ずいぶん遠回りしながら駅に辿り着いて。

女子トイレに連れ込まれそうになったケド、ソコは全力で拒否して多目的トイレに落ち着いて。


「助けを呼ぶわよ!」


バッグからスマホを取り出して力強く宣言したデイジーを、アオは呆れ顔で眺めた。

元気だナー…

あれだけ吼えながら爆走したのに、息も切らしてねーよ、コイツ。

マッチョ、スゲェな。