ハイ、別に突然でもなかったケドね。

帰ってからずっと紙袋を抱きしめて部屋をウロウロするアオを、何度か呼んでたンだケドね。


「何かあった?」


やっと正気に戻った様子のアオに、透子は首を傾げて訊ねた。

顎のラインで切り揃えられた美しい黒髪が揺れ、白く透き通る頬に影を落とす。

あぁぁ…
絶っっっっっ対、似合うぅぅぅぅぅ…


「しーちゃん…」


ゴクリと喉を鳴らして呟いたアオは、紙袋からデイジーに託された浴衣を取り出した。


「コレ…どー思う…?」


「あ、浴衣だ。
キレイ」


よし!
お気に召した!

この勢いで…


「コレを!
俺のために!
着てくれないかっ!?」


「…
ウェディングドレスには見えないケド」


「え?
あー…うん、そんなノリに聞こえる?
まぁそこまでじゃないケド、それなりの重みで、着てくれないかっっっ!?」


「んー… 着ない。
面倒だし。
お祭りにでも行くってンなら、考える」


ハイ、玉砕。