雄の一面を垣間見せたオネェを冷ややかに一瞥したものの、アオはまた貝になる。

それでも、もうデイジーは気にしない。

ニコニコしながら、一人で勝手に喋りだす。


「実はね、お店の常連さんにイイモノ貰っちゃったのよぉ」


「…」


「でもねェ、ホラ、アタシって女らしいケド大柄じゃない?
どー見てもサイズが合いそうにないのよね」


「…」


「だから、透子ちゃんにプレゼントしようかと思って。
コレ、どうかしら?」


持ってた紙袋をゴソゴソしていたと思ったら…
デイジーは弾むように走ってアオの前に回り込み、大きな布を広げて見せた。

途端に、アオの視界に色彩が蘇る。

生成りの白の上に、艶やかな緋色と糸のように細い黒が這う、古典的なよろけ縞。


「浴衣なンだケド」


だよね、デイジー。
見りゃわかる。

でも、コッチは見なくてもわかるよ。

絶っっっ対、似合う。

むしろ、この大正ロマンを彷彿とさせる浴衣を着こなせるのは、部屋で待つ可愛い人しかいない。


(どーしよ、コレ…
鼻血出そ…)


大きな手で顔の下半分を覆って立ち止まったアオは、『今夜は花火大会でショー?』なんてデイジーのお喋りを遠く聞いていた。