だが、他は謎。

どうして『偶然』『接触』しただけの、『ご近所サン』の身元を洗う必要がある?

『関係なさそう』って、いったいナニに?

そもそも、そんな玄人っぽい方法で情報収集しちゃうビジネスマンは何者?

そして、ここからの会話はもっと謎。


「で、例のクライアントはわかったのか?」


さらに低い声でアオは囁いた。

そんなん、隣にだって聞こえねェよ。
パチンコ屋だってコト、忘れてない?

なのに、不思議とビジネスマンは聞き取っている。

聞き取った上で、苦々しく顔を歪めて吐き捨てる。


「無理だ。
アイツらからその情報は得られない」


「手懸かりもか?」


「無理だよ。
わかってるだろう?
俺たちはただの駒だ。
アイツらの都合でチェスボードに並べられるだけの、使い捨てのポーンなンだよ。
ナニカを知らされるコトなんてない」


「…
悪かった、忘れろ」


睫毛を伏せたアオが、店員を呼ぼうとナンバーランプのボタンに手を伸ばす。

が…


「…
どうしてなンだ?」


小声を通り越して苦悶に満ちた呻きになったビジネスマンの言葉が、出玉を精算しようとするアオの動きを止めた。