「私は………




守りたいって想われるだけで

その子は幸せだったと思います。」







気づけばそんな台詞が


私の口から漏れていた。






風が吹き、


濡れ羽の髪が揺れる。




金木犀の優しい香りが鼻をくすぐり






トクリ、と胸が弾んだ。







『あぁ、守らなきゃ。』





私の声が頭にこだまする。



『私が、ホシを、守らなきゃ。』





ホシ?

ホシって誰?





その名前をつぶやくだけで

その名前が耳に入るだけで



愛しくて

切なくて


たまらない気持ちになる。




会いたくて会いたくてたまらない。


愛しくて大好きな


大好きだったキミ。







でもこの想いは、もう、届かない。






ホシって誰?

私が会いたくてたまらない。


この“キミ”は、誰?














………ふと、周りを見ると


金木犀の残り香だけが漂い


気づけば少年はもう、

どこにもいなかった。