ゆっくりと顔をあげると


目を見張るくらい艶やかな

濡れ羽色の髪が


私の声に応えるように

こくり、と下がった。






男の子………なんだ。



そんなことを思っているうちに

その男の子は人混みに消えてしまっていた。








その男の子の幻影に見惚れるかのように


しばらくぼーっと立ち尽くしていると






「……りざわちゃん。芹沢ちゃん?!」


目の前に燃えるような赤色が揺れて

私はハッとした。




「芹沢ちゃん、大丈夫か?」


心配するリリーさんにうなずき返すと

リリーさんはほっとしたように笑うと




「じゃあ、行こうか。」


そう言って私の手を引いて歩き出した。