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˚




聖に、伝えなきゃ。





私はまだ、涙の残る目をこすってそう思った。





時計を見ると、あと、365分。




もう、遅いかもしれない。




それでも私は急いで着替えると、家を出た。
















…………聖は、どこにいるのだろう?







こうしてさまよっている間にも


1分1秒と時間は過ぎていく。










寮にも

StarsのHR教室にも

特別教室にも

保険室にも







どこにもいない。










のこり時間はもう、


60分をきっている。













リリーちゃんと来たベランダを開けると








「わぁ………。」








最初に来た時のように


金木犀の香りが広がった。




すごい落ち着く香り。







そっと目を閉じると、


いままでのたくさんの光景が蘇ってくる。










この世界が嫌だと思った日

リリーちゃんに出会った日

黒羽くんに出会い別れた日

メリと魔法勝負をした日

聖に惹かれた日

恋した日











きっと、最初にメリが言っていたように











この時間が過ぎたら私は






リリーちゃんや


いっちゃん先輩、


聖の


記憶から、抹消されてしまうんだろう。












やりたいことなんて、いっぱいあった。







でも、それを後悔するにはもう、遅すぎる。








私は、今、伝えなきゃいけない。








私はベランダの扉を閉めると










屋上に走り出した。