「だから、聖。優菜をよろしくな。」







一さんはそう言う。




「そんな………俺なんかに………。」





ついこの間、振られたと言って泣いていた優菜を慰めることさえできずに



ただひとり、嫉妬に悶えていたような



ガキで小心者な俺に、何が、できる?





「いや、聖。俺は、お前だから頼むんだ。」




一さんは俺の肩にそっと手を置いた。



「俺は、お前を息子のように思っている。

そして、それと同時に、お前なら優菜を幸せにできるだろうとも思っている。


だから、聖に優菜を頼むよ。



………そうでなければ、優菜はひとりになってしまう。」













そのことばに、あの時の情景がフラッシュバックする。



―「きゃーーーっ」


悲痛な泣き叫ぶ声が、耳の奥を突き刺した。