「………ねぇ、なんで“キンモクセイ”を聖が持ってるの?」








聖は、なにも、答えない。








“あの時”、お父さんは、病院の屋上から転落して亡くなった。






あと少しで


あと少しで……っ!





退院できるはずだったのに。











あの時、屋上の緑のフェンスに手をかけて


放心状態で下を見下ろす聖の姿があった。









まだ、聖が幼かったのと、お父さんの言葉で聖は誰にも咎められずに済んだけど…………








あの時、お父さんは、聖のせいで亡くなった。


私は緑のフェンスに手をかけた聖を見た途端、そう思った。








「ねぇ………、聖がお父さんを………?」






そう、聞いても聖は固まったまま、口を開かない。







「ねぇ、聖!答えてよっ!!」





そして、違うと言って…………っ!










―ヒューッ





打ち上げ花火が

星宙へ登る。





「あぁ、そうだよ。」




聖がそう、突き放すように言った。






「俺がお父さんのカメラマンの腕に嫉妬したんだ。」









―パァーンッ


宙に残酷なほど綺麗な花火が打ち上がる。









「………最低。」


私は、そう言い放つと走りだした。






なんで……っ!


なんで…………っ!!!





私は部屋のベッドに飛び込むと、そのまま枕に涙をこぼした。