「………ぅな。優菜。」





心地よい澄んだバスの声色が耳をくすぐる。






「ぅーん………」



「優菜。起きて。」









肩に手を置かれて


そっと目を開けると、









「……………!?!!?!?!!?」










びっくりするほど近くで


綺麗な濡れ羽色の髪が揺れた。











白くて高い鼻が触れそうなほど近くにある。








―ドクン








と心臓が波打った。


















「優菜、大丈夫?」











そう言いながら優しく髪をなでてくれる聖に


こくり、と頷いてみせる。







手を伸ばすと聖がそっと、私のその手をとってくれた。


形のいい唇の口角が、優しく上がる。













あぁ。手を伸ばせば触れられる、この距離。




なんて、懐かしいんだろう。








また、聖に、触れられた………。










うれしくなって、ほほえむと


聖の白くて男の子らしい大きな手が


私の頬をなでた。











私はよろこびに心を溢れさせながら


ゆっくりと、また、目を閉じた。










季節外れの金木犀の優しい香りが鼻をくすぐる。





背中と膝裏にぬくもりを感じながらも自分の体が包まれる。









私は安心して意識を手放した。