☪︎


˚




冬が確実に近づいていることを感じさせる冷たい風が


金木犀の穏やかな香りを運んでくる。



やわらかくて

優しくて

ほんと………





「好き…だなぁ。」





自分で、自分の口から零れた言葉に驚いて

私は口元を手で覆った。






好き………。





それと同時に、

ショップでまだただの少年だと思っていた聖の話を聞いた時のことを思い出す。



˳

˚




少年の好きな子が彼のことを嫌っていたら、





なんて酷いことを考えてしまった。








私と同じ、べっ甲のような瞳をしているのなら、


私でも、いいじゃない。なんて。




私なら隣で笑っていてあげられる。なんて。






私は、

少年の

世界を、時をも超えたその恋を



誰よりも応援して癒してあげなければいけない立場のはずなのに





その恋がいっそ叶わなければ………






なんて、惨いことを思う。




˳

˚




確かに、あの時、私は、そう思った。