「店長、私、結婚しちゃうかもよ」

「……」

開店前にお邪魔すると、眉毛を脱色中の店長が居た。
眉毛も色素薄いなあと思ってたのに、脱色してたのか、という気持ちは置いておいて。

「聞いてる?」

「聞いてるけど、胡蝶の顔が結婚する前からブルー入ってるから。報告ぐらい嬉しそうにして欲しいわ」

「嬉しそうな顔って?」

「馬鹿みたいに歯茎見せて笑いながら、こうよ!」

両頬を抓られて、上へ持ち上げられた。

「やだっ 手にファンデがついちゃったわ。化粧濃い過ぎ」

「自分で触れてきたくせに」

「セクハラみたいに言わないでちょうだい。全くもう」

店長は、面倒くさそうに手を洗うと全麦パンを切ってオーブンに放り込むと、グラノーラかけヨーグルト、生姜紅茶という質素なメニューが並べられた。



「店長、ダイエット中?」

「そうなのよね。BARなんてすると、夜にお酒飲んじゃうから、ビール腹が怖くて」

しみじみと言いながら、私にはパンにバターをくれた。