キスってどんな感じなんだろうと軽く考えていた。


夢を見るだけで実際に自分じゃしたことはないし、友達とだってキスの話なんかしたことなかったけど。


ようやく知ってしまった。


大輪の花火に照らされて重なる2つの唇。



これが、キス。



わたしの目の前で橘くんと百合ちゃんの唇が重なっていた。


逸らしたいのに逸らせない。

逃げたいのに逃げられない。


自分の体なのに思うように言う事を聞いてくれなかった。


橘くんのことがこんなに好きなのに。

好きも、キスも、全部わたしじゃだめなんだ。


終わりたくない。

橘くんのこと、好きだもん。


でも……。


「っ……」


ようやく呪縛から解放された体で、少しでも橘くんたちから離れようと駆け出した。