赤ちゃん……私と伊織さんの子ども。
想像しただけで、顔に集まってた熱が頭にまでのぼってくる。きっとお湯が沸騰するくらい熱くなった頭では、何にも考えられない。
(あ……あ、赤ちゃんって……わ、私と……伊織さんの!?)
想像するだけで叫びたくなりそうなほどに恥ずかしい。どうやったら赤ちゃんが出来るのか……先輩としてくるみさんが……ほんの少し教えてくれた。
だけど……
伊織さんが新居を“俺たち家族の新しい家だ”って言ってくれた時。すごく嬉しかったことを覚えてる。
家族……
私には今までおばあちゃんしかいなかったし、これから増えるなんて想像もつかなかった。
自分はずっとおばあちゃんと一緒で。おばあちゃんが先にいなくなることは避けられないけど、そうしたら一人ぼっちでおはる屋を守っていくんだと思ってたし。寂しくても仕方ない未来だってあきらめ受け入れてた。
だけど、思いがけず伊織さんが現れて。むちゃくちゃな出会いから、最初は契約から始まった歪な関係だったけど。いつの間にか彼を好きになって、彼の幸せを願ってたけど。何の奇跡か伊織さんが私に、“本物の夫婦になろう”とプロポーズしてくれたんだ。
つらい子ども時代を過ごした伊織さんには、ずっと家族の暖かさに触れて欲しいと願ってきた。最初はお母様を憎んでた伊織さんも、今は時折電話で会話をする程度には和解してきてる。
親子は、憎しみだけじゃない。もっと素敵なものがあるんだって、感じてもらいたい。
(自分の……子どもだったら。伊織さんはどんなふうにするのかな?)
太郎と花子でさえあんなに可愛がるんだし、自分の血をわけた子どもなら尚更可愛がりそう。想像しただけでおかしくなってきた。



