契約結婚の終わらせかた番外編集




「ああ、もちろんだ」


私が口を開く前に、伊織さんが答えてしまいました。


「あの時のリベンジという訳ではないが……」


それだけを言った後、彼は私をじっと見つめてくる。その瞳がいつもより熱を孕んでるようで……耐えきれなくて、腕にかえってきたみどりをギュッと抱きしめた。


“あの時”というのはもちろん、2年前のクリスマスのことだ。待ち合わせをキャンセルされたと勝手に思い込み、絶望して雪の中で倒れた私。 あの後入院して伊織さんとお別れする決意を固めたんだ。


今は、もちろんお別れするなんて考えられない。伊織さんは十分過ぎる……ううん、それ以上の愛情と信頼をくれているのだから。


「ちょっと、ちょっと~そんなにあっつ~く見つめあわないでくださいよ。カレシが今ここに居ないあたしがかわいそうなんですけど~あいたっ!」

「こら、心愛! 大人をからかうなと何度言ったら」

「バカ兄! 何もたたくことないでしょ!!」


心愛ちゃんが兄とぎゃんぎゃん喧嘩を始めて、以前と変わらない光景が返ってきたんだ……と涙が出そうになった。


2年近く断絶してた空くんの訪問も、これでやっと元通り。その間出会いと別れもあったけど。あの後懐かしいメンバーが久しぶりに揃って。究極有り合わせのものでクリスマスパーティーを開いて。2年前の夏休みの時のような楽しい時間を過ごせた。