契約結婚の終わらせかた番外編集




堅くんには金魚について訊こうと思ったのに、心愛ちゃんとの親密さにあてられっぱなしでしたよ。


(心愛ちゃんもやるなあ……でも)


心愛ちゃん、最近は以前にも増してオシャレに気を配ってる。昔から私より女子力は高かったけど、今はもっともっと磨きがかかってきてるんだよね。


中学生の堅くんと小学生の心愛ちゃん。2人の1年の差は大人が考える以上に大きい。心愛ちゃんがああやって積極的にスキンシップを取ろうとするのも、可愛くなろうとするのも、きっと不安だからなんだ。


それを考えると、私はまだ恵まれてるよね。伊織さんとは夫婦で同じ家に住んでいるんだから。


“碧お姉ちゃんもさ、もっと甘えりゃいいじゃん”


不意に、心愛ちゃんの言葉が思い浮かんでドキンと心臓が跳ねる。


“せっかくソーシソーアイなんだから、もっとくっつくといいのに”


く、くっつくて……い、いったい何を!?


堅くんに抱きついた心愛ちゃんの姿を思い出すだけで、顔がかっと熱くなる。たまらなくてギュッとまぶたを閉じた。


(む……むり! 伊織さんにあんなふうに……なんて。恥ずかしすぎる)


別に誰かがいるわけじゃないのに、隠すように両手で顔を覆う。今、顔が絶対真っ赤になってる。


心愛ちゃんにはなぜか見抜かれてるんだよね。私と伊織さんにはまだ何もない……って。


自分でも奥手過ぎるとは思うけど、こういうのは自然な形に任せるのが一番だと思う。伊織さんも無理強いしてくる様子はないし。


ただ、現在妊娠中のくるみさんには「伊織さんとの赤ちゃん欲しくないの?」って訊かれたことがある。

「今頑張ればこの子と同じ学年よ」って。なんのことかよくわからなくて、曖昧に笑っておいたけど。


やっぱり……伊織さんも……赤ちゃん……欲しいのかな?