「あ……あれは。伊織さんが……しあわせになってくれたらって……ただそう思っただけなんです。終わりはわかっていても……私を助けてくれたあなたに何も返せない。だから……せめて……あなたが幸せになってくれたらって……」
何だか感じる視線が熱っぽい。お腹に回る手に力が籠って……離すまいと言うように、体が密着する。
「ありがとう……碧」
囁く声は少しだけかすれていて、すごく甘く聞こえる。心臓がドキンドキンと忙しなく動いて、伊織さんの熱が伝染するみたいに顔が熱くなる。
「碧……」
伊織さんが私の耳にささやいてきた。色めいた声に何が起きるのか解らなくて目を閉じる。怖いようで、甘い期待を微かにした瞬間。
「うおっほん!」
咳払いが聞こえて、ハッと現実に立ち返る。
……ここ、ファミレスだった!
我に返った瞬間、気恥ずかしさで顔が一気に熱くなる。身を縮めるように顔を伏せた私は、店員さんから注意をされてしまいました。
「お客様、こちらは公共の場所でございますので……スキンシップは程々にお願いいたします」
「ああ、わかった。迷惑をかけて申し訳ない」
私は離れようとしたのだけど、謝罪した伊織さんは少し力を緩めただけで離してくれません。
心なしか美鈴ちゃんまでもがじっと私たちを醒めた目で見ていたような気がして、いたたまれませんでしたよ。



