契約結婚の終わらせかた番外編集




私の答えに、ホッとした様子の伊織さんだけど。眉尻を下げて私の肩に手を置く。


「ありがとう……おまえが信じてくれるなら十分だ。他の人間すべてに疑われたとしても、碧が信じるならおれは大丈夫だ」


だが、と伊織さんは済まなそうに謝ってくる。


「しかし、他人はそうはいくまい。無遠慮で無責任な話を振り撒いていくだろう。おれがしたことではないが、おまえが傷つくこともあるかもしれない……なるべく対策を立てさせるが、不甲斐ない夫で済まない」


萎れた菜っ葉のように落ち込んだ伊織さんは、私を離すまいとするかの様に後ろからお腹へ両手を回し肩へ顔を載せる。ギュッと抱きしめられて、彼が不安なんだと知れたのは重ねた指先の冷たさから。


「伊織さん……大丈夫ですよ」


彼の冷えた指先を暖めたくて自分の両手をそっと重ねると、なるべく優しく伊織さんに話した。


「私だけは、何があってもあなたから逃げたり離れたりしませんよ。私のすっぽん並みのしつこさは伊織さんだって身に染みてるでしょう?」


ちょっと冗談っぽく言ってみれば、伊織さんの唇からフッと息が漏れた。


「そうだったな……おれの食生活を改善するために……あれだけ粘られたのは意外だった。もっと御しやすいと考えて話を持ちかけたのにな。おまえのど根性は驚いた。……母さんとの仲まで取り持つとは思わなかった」