「疲れた……」
そんなふうに呟いた後、ぐったりとテーブルに突っ伏してしまうのは許してください。あの後延々と伊織さんが暴走して、カート7台目に突入するところを必死で止めたんだから。
カート6台から必要最低限のものを選り分ける時も、伊織さんがあれこれ理由を付けて残そうとするから、なかなか減らなくて。途中で美鈴ちゃんが泣き出して、慌ててベビールームに駆け込み、ミルクとオムツを済ませたり。
今、午後3時過ぎてます。伊織さんが駄々をこねたお陰で今からお昼ごはん。作る時間がもったいないから、って比較的近いファミリー向けのレストランにやって来ました。
「どうした? 疲れたか」
「いえ……大丈夫です」
私はこれだけ身心ともに疲れきっているのに、伊織さんはまったく疲労感を感じさせず、むしろ生き生きしてる。メニューを手にしてあれこれと吟味してた。
伊織さんの食生活の矯正を始めてから1年と数ヶ月。かなりの種類のものが食べられるようになった彼は、限定的ではあるけど外食も可能になってる。1年前を思えばずいぶんと進歩したかな。
「じゃがいものグラタンはどうですか? サラダも……ミモザサラダなら卵が入ってまろやかな味になります。シーザードレッシングを頼めばいいでしょう。まだ肉類はダメですか?」
「そうだな。魚はともかく肉はもう少し時間が欲しい。おまえの勧めるメニューを試してみようか」
伊織さんも少しずつだけど改善に取り組んでいる。幼少期に10年近く受けた酷い虐待のトラウマはなかなか癒えないけど、こうして2人で頑張ればいつかは治る。そう信じてる。



