また、美帆さんはため息をつく。
『ならさ、せめて鈍感を抜きで遊びに出たら? 同じ家にいたって、バラバラに過ごしちゃ意味ないでしょ。
もしも自分だけと気が引けるなら、わたしの友達を紹介するよ。同性からの誘いならいいでしょ?』
「……誘い?」
『そう、そ! 碧ちゃんももっと友達作らないと。狭い世界だけじゃ人生もったいないよ。もっと楽しまなきゃ!』
美帆さんの提案は、正直魅惑的だった。
私の中では、伊織さんが金魚優先で構われない寂しさも少しずつ積もってきてる。
彼のことを理解したいししたいようにさせたいと思う一方で、相思相愛の夫婦になれたんだから、それなりに愛してほしいとも言いたかった。
私も、完璧な人間じゃない。できたら伊織さんと過ごしたい。振り向いてほしいとずっと考えてた。
女性として努力しても、伊織さんは褒めてくれたことはない。どころか、痩せたことすら気づいてくれなくて。なんだろう……って。虚しくなったのもある。
もちろん、痩せたり綺麗になる努力は自分のためであって、誰かに褒めてもらうためではないけど。
やっぱり、一番間近にいる人には気づいてほしいと願ってしまう。
(……いいよね、私。ちょっとくらい出かけたって。伊織さんは好きにしてるんだし、私だって……)
ちょっとだけ拗ねたような気持ちになって、美帆さんの提案を受けようと口を開いた瞬間――突然スマホが手のひらから消えてビックリした。
その行方を目で追えば、スマホを持ち上げたのは伊織さんで。彼は私の代わりに美帆さんと話し出した。



