美帆さんが話す内容を必死に頭で整理する。話の流れからすれば、伊織さんは駄目だから、彼以外の男性を紹介するってことだよね? たぶん……だけど。
とんでもない、と私は首を左右に振った。電話越しに見えるわけでもないのに。
「い、いえ。私は今のままでいいです。紹介していただく必要もありません」
『え~そう? 別に不倫しろとか離婚しろとか言ってんじゃないよ? ただ、碧ちゃんはろくに他の男性を知らないわけでしょ。だったら、一度きり一緒にご飯を食べてお話するくらいいいじゃない?どんな人がいるのか知れば、伊織さんを客観的に見れるようになると思うけど』
たぶん、美帆さんは心底心配してくれてるから、敢えて言いにくいことを言ってくれてる。一過性じゃない優しさだから、キツイことも言うし厳しい指摘もしてくれる。
『本当に、今からそんな調子で大丈夫なの? 全然碧ちゃんと過ごそうともしないなんて……この先、何十年と残りの生涯を一緒に過ごすんだよ? 死ぬまでそんな状態だったら、碧ちゃんは耐えられるの?』
美帆さんの鋭い指摘に、流石にすぐには反論できなくて口をつぐんだ。
……私も……本当は……寂しい、と。伊織さんと過ごしたいと……望んでる。金魚より私を見てって……。
「…………」
本当は、それでもいいって答えるべきかもしれない。けど、流石に私もずっとこのままは嫌だと思う。
夫婦だし家族だから、一緒に過ごしたい。どこかに出掛けなくてもいいから、せめてそばにいたい。そんなわがままな思いが湧いてくる。



