契約結婚の終わらせかた番外編集





結局、花子は数日のうちに産卵した。たぶん受精しているだろう卵は、伊織さんの手で食べられる前に別の水槽に移された。

そして体のことを考えた結果、太郎と花子は別の水槽に分けられてる。落ち着いたらまた一緒にするらしいけど、金魚の繁殖期は秋まで続くからな……って苦笑するしかない。


太郎と花子が早熟だった原因は、どうやら伊織さんの餌の与え方と愛情を込めたお世話だったみたい。


卵から孵ったのはわずか数匹だったけど、伊織さんが愛情を込めてお世話してるから大丈夫だと思う。……心配で社長室に持ち込むくらいだし。


その話を聞いた美帆さんには電話越しに呆れられてしまいました。


ちなみに、彼女は名古屋でジャーナリスト兼写真家の彼と同棲中。婚姻届は5月5日に出すらしい。


『碧ちゃんは、そんなのでいいの? 金魚に先越されちゃってさ』

「まあ……正直な話。人間としては複雑な気分ですけど」


伊織さんの金魚への溺愛っぷりに拍車が掛かっているから、ちょっと寂しい気持ちになる時もある。休日はそわそわして水槽の辺りにべったりだし。


でも……


伊織さんは伊織さんなりに、不器用だけど私を思いやってくれることがわかるから。怒るに怒れない。