車を降りると、恋人繋ぎで手を繋がれて、そのままメンズフロアを目指した。

先輩はお気に入りのショップを見つけると、すぐにポロシャツやロンTを何着か手にした。
そのままカゴに入れたり、迷うと私に意見を聞いたり…
そうして、5.6着を選んで買った。

先輩が服を選んでいる間、私は同じショップでハンカチを買った。
お父さんとお兄ちゃん、それから先輩へのプレゼントで。

「ありがとう。
智美のおかげで、いろいろ買えたよ」
買い物が終わると、先輩がそう言ってくれた。
でも、私はそんなふうに言われるほど、何もしてないのだけど。

そのあとは、ランチを食べてまっすぐ帰ることにした。
途中、ケーキ屋さんに寄ってもらったけど。
お母さんとお姉ちゃんへのお土産だ。
もちろん、自分の分も。
先輩も、車を貸してくれたお姉さんへのお礼に、ケーキを買っていた。

先輩の家に着いたのは3時前。
家族はそれぞれに出掛けているらしく、誰もいなかった。

先輩について上がらせてもらうと、
「飲み物用意して行くから、先に俺の部屋で待ってて」
と言われ、そのまま先輩の部屋に向かった。

すぐに先輩は、紅茶を持って来てくれた。
「ありがとうございます、大和先輩」

そうお礼を言うと、先輩はちょっと不機嫌そうに眉間に皺を寄せてこう言った。

「もう、その"先輩"って呼び方、止めないか?
俺は卒業したから、もう先輩じゃないし、智美にそう呼ばれると、ちょっと距離を感じるんだ」