仙人と男の子女の子が中央に。
(男の子)「ほんとだ、同じことの繰り返しだ」
(女の子)「どうしても、あのふたりは
救えないのかしら?」

ふたりじっと仙人の方を見る。
(仙人)「救えないことはないさ。すごく時間が
かかるかもしれないが、意外とそうでもないかもしれない」

(女の子)「どういうこと?」
(男の子)「可能性はあるんだ」
(仙人)「そうとも。可能性は十分にある。さっきも言い
かけたが、人間そのものを良い方向へと変えていく運動を
根気よく続けていくしかあるまいて」

(男の子)「なあんだ」
(女の子)「信じるのね!」
(仙人)「そうだ、信じるのだ。これからは蝶を見たら
あの二人だと思い、必ずふたりが死なないでいい時代が
来るように祈ることだ」

(二人)「祈ることだ!」
(仙人)「戦うことだ!」
(二人)「戦うことだ!」

(仙人)「この運動を広げることだ!」
(二人)「広げることだ!」
(仙人)「諦めずに持続することだ!」
(二人)「持続することだ!」

(仙人)「仲間を励まし、人間を革命する戦いを
根気よく全世界で繰り広げることだ!」
(二人)「繰り広げることだ!」

(仙人)「そうすれば、人類の宿命の転換は必ずできる!」
(二人)「必ず達成できる!」

|暗転|

大きな蝶、無数の蝶が舞い続ける中を
若者と姫が上手から下手へ。
エリート二人が下手から上手へ。
稲妻が光り、雷鳴が轟き渡って、

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「起きてください!起きてください!」
「むむむ」
「40元払ってください」
「柵を乗り越えて入ってはいけませんよ」
何人かの人声が聞こえる。

「あ、すみません。私は日本人の旅行者です。
40元。はい、今払います」
皆の笑い声が聞こえた。膝に抱えていたリュックから必死になって財布を探す。
そうだ財布はポケットの中だった。みんなの視線を感じながら40元渡す。
また大きな笑い声が聞こえた。
「リーベン、ハオハオ」

今は一応冬場なので蝶の季節ではない。ところがどこからともなく蝶が一つ
また一つと集まり始めた。
天空はにわかに掻き曇り。人っ気はどこにもない。

稲妻が光る!雷電、閃光。ものすごい雷の轟き。
『まさか』
ぽつりと大粒の雨しずく。
『これはやばい。あの建物に逃げ込もう』
その間にも雨は大降りになってきた。
篠突く雨だ。濡れた服を拭きながら胡蝶泉を見やる。

水面は雨しぶきで霞のようにも見える。
『あの蝶たちはどこに行ったのか?』
するとおぼろげながら二匹の蝶の大きな幻が見えた。
あ、その後ろにもまた二匹。

皆こちらに頭を下げているように見えた。
こちらも手を振るとやがて幻は遠くかすんで消えてしまった。
後にはただ天空との境目のない胡蝶泉の水面だけが残っていた。