再び目が覚めるとそこにはたくさんの赤旗が天空にはためいていた。
森の中。どうも舞台のようだ。奥に見慣れた泉の柵が見える。

仙人を真ん中に左右に赤いスカーフの男の子と女の子が座っている。
仙人にスポットが当たる。

(仙人)「それはすさまじい殺戮じゃった。蒙古軍の去った
後には生きとし生けるものは何一つ見あたらなった」
(女の子)「姫と若者は生き延びたの?」

(仙人)「さあ・・・・・どうだか」
(男の子)「いま、紅衛兵の時代にはもうその様な無益な戦いは終了した」
(仙人)「さあ・・・・・どうだかな?」

ー暗転ー

(仙人)「つい最近のことじゃが、文化大革命というのが起きた。
南の広西チワン族自治区でそれは極限に達した」

ー明転ー

中央に『貧下中農最高法廷』と書かれた横断幕。
何本かの紅旗が翻る。上手に軍幹部がいて横にジャーナリスト。
ふたりの男女が引き出されている。
中央に女幹部が立って演説をしている。
周りを紅衛兵と民兵が取り囲んでいる。

(女幹部)「二人は極秘会議を開き共産党打倒を謀議した」
(男)「うそだ!」
(女幹部)「嘘なものか。お前は精華大学のエリートではないか」

(男)「確かに技術者ではあるが人民の敵ではない!」
(女幹部)「ええいだまれ!この女も大学出の人民の敵だ。
ふたりで密会している所を目撃されているのだぞ」

(女)「私達は人民の敵ではありません!」
(女幹部)「お高くとまってんじゃないよ人民の敵!
皆どう思う?生かすべきか、殺すべきか?」

(民兵たち)「殺せ!人民の敵!共産党万歳!」
稲妻が走り雷鳴が轟く。

ー暗転ー

スポットが軍幹部とジャーナリストに当たる。
(ジャーナリスト)「人間をこんなにやたらに殺してよいのですか?」
(軍幹部)「これは大衆闘争ではないか。プロレタリア独裁というのは
民衆の専制である。軍もこれには手出しができない」

ー暗転ー

稲妻が光り雷鳴が轟く。
闇の中で民兵の声が響く。
(民兵たち)「二人が逃げたぞ!探せ探せ!」