碧汰とわたしは同い年の5年生。

小さい頃からの幼なじみだけれど、いつも一緒にいるわけではない。

わたしがこの家に来るのは、1年のうちの1ヶ月と少しだけだから。


本当の家は、同じ県内でも端と端で遠く離れた場所にある。

わたしの家にはお父さんがいなくて、毎日仕事のあるお母さんが、夏休みの間はおばあちゃんたちの家に連れてきてくれる。

片道三時間以上はかかるこの家に来るのは夏だけだ。

お母さんはおばあちゃんとおじいちゃんとあまり仲が良くなくて、この家に来るときは車からわたしを見送ってすぐに帰ってしまう。

2日に1回、夜の9時にかかってくる電話にはわたしが出るように言われていて、それはこの家で過ごす間のお母さんとの唯一の約束。


小学1年生ではじめてこの家に来たとき、それまで会ったこともなかったおばあちゃんとおじいちゃん、知らない家に馴染めず、ずっと部屋の隅に固まっていた。

そんなわたしにおばあちゃんが手を焼いていたことには気付いていたし、心細くて泣いてしまったらお母さんに連絡されてしまうかもしれないという思いで、たくさん我慢をしていた。

碧汰は真隣の家に住んでいて、初日から声をかけてくれていた。

最初こそ話しかけられても隠れてしまっていたけれど、碧汰は気にせずに毎日家にやってきて、そのうちに緊張も解けて普通に話せるようになったし、一緒に遊ぶようになった。

それ以来、夏休みの間はいつも一緒にいる。