静かになった部屋に、私と蓮央の呼吸する音だけが響く。
「咲誇」
腕を引かれ、気づけば彼の胸の中にいた。
「蓮央……」
「悪ぃ、あんな汚いマネしたくなかったけど……アイツの思い通りにさせたくなくて」
「……ううん。ありがとう、蓮央」
温かい胸に顔を埋めると、優しく頭を撫でられた。
「我慢するな。もっと俺らを……俺を、頼れ」
「我慢なんて……」
「『泣いて。今なら誰も見てない。今だけは、我慢しなくていいから』
お前が俺にそう言った言葉、今そのまま返してやる」
蓮央…………覚えていてくれたの?
北苑に真実を教えてもらったあの夜、バイクの上で私が言った言葉を。
あのとき、初めて泣いたあなたを見た。
少しだけ、近づけたような気がしたんだ。


