恋猫シンドローム



「我が十束高校(とつか)の光源氏よ!!」

「は?光源氏??」


あの、源氏物語の??


「イケメンなんて言葉じゃ安すぎるわ。光よ、輝いてるの!!」


「……………………………あの、おっしゃってる意味が…」


「敦賀 湊大よ!!容姿端麗、スポーツも勉強も完璧な光…」



まずい、この話、長くなりそうだ。早々に退避しよう。



「あの、授業に戻りますので、失礼します」

「それでね!それでね!なにせ、あの甘い声が……」



永遠に続きそうな敦賀信仰を無視して、私は保健室を出る。廊下は、授業中だからか、静まりかえっていた。


この2年間、毎日通っていたはずの学校が、いつもとは違って見えた。



「今の授業って、確か………」


06/08火曜日、2時限目………科学。科学、科学………
今まで、絶対に休むことなんてなかった、私の命の次に大切な科学の授業!!!



「っ、私としたことが!!!」


私は全速力で駆け出し、ガランッ!!と教室の扉を勢いよく開け放った。


「はぁっ、はぁっ………」

「お、おお、藤森?どうしたんだ?」


科学担当の先生であり、科学部顧問の地理 博文(ちり ひろぶみ)先生が驚いたように私を見る。


地理先生は60代で、高齢ではあるが、とても優れた科学の教科担任だ。