恋猫シンドローム




保健室につくと、私はなんとなく、敦賀君と出会ったあのベッドを選んで上に乗った。


『黒猫さん、そういえばどうして私の名前を?』

『そのことね』


黒猫さんは尻尾ををゆらゆらと揺らし、ベッドにくつろいだ。私も合わせるようにくつろぐ。


『君の事をずっと探してたんだ』

『私を?』


探してたって、どうして………


少なくとも、黒猫さんとの出会いは、あの実験失敗の日からだったはず。


『君は、僕の運命の人だから』

『……………はい?』


何を言ってるんだ、黒猫さん。まさか、猫に、猫に口説かれ…


『鈴は覚えてないと思うけど、鈴は僕が車にひかれそうになった時、助けてくれた』

『車………』


そういえば……小さいとき、私は子猫を助けるために道路に飛び出したらしい。


あのあと、お母さんとお父さんにこっぴどく叱られたのを覚えてる。


『あのときの子猫………?』

『君がいなければ、今の僕はいないよ』


黒猫は私に顔を近づけ、額に額を合わせた。金の瞳が、とても綺麗だと思った。



『君の傍にいたくて、ずっと見守ってた』


あの、いつも感じる視線は、黒猫さんの……



『今度は、僕が君を助ける番だ。君が人に戻りたいと、願うなら、僕もそれを助けるよ』


『黒猫さん………』


そんな風に、見守ってくれてたなんて……。


なぜだか、すごく泣けてきた。