ーボコボコボコ
フラスコから聞こえる、薬品の沸騰音。試験管を手に、わたし、藤森 鈴はシャーレをのぞき込んだ。
「ふっ、ふっ、ふー!今日はベロウソフ・ジャボチンスキー反応に挑戦!」
実験へのわくわくが、私の生きがいだ。正直、科学以外にわたしに趣味なんて無いし、趣味で留める気もない。
まぁ、自分が普通の高校生で無い事は分かってる。
高校二年生にして、クラスでの友達なんていないし、ましてや下校途中にカラオケに行ったりとか、彼氏とデートとか、普通の女子高生みたいな生活は知らない。
全て、時間の無駄だ。それなら、実験に時間を費やしたい。
「セリウム塩などの金属塩と臭化物イオンを触媒として、マロン酸などのカルボン酸を臭素酸塩によりブロモ化する化学反応のことで……」
あたしはご機嫌にも一人解説をしながら、薬品を混ぜていく。
「系内に存在するいくつかの物質の濃度が周期的に変化する非線型的振動反応なんて、面白すぎ!」
非平衡熱力学分野は、本当に興味深い。


