『君が猫になったからじゃないかな』
「私は猫じゃないの!」
私はスカートが濡れないよう気をつけながら、黒猫の前にしゃがみこむ。
「あれは、事故で………」
『猫でいたらいいのに』
「それは困るよ、私には人の体で、やらなきゃいけない事があるの!!」
猫のままなんて、そんなの困る。でも、これって、あの実験の副作用が残ってるって事だよね。
また、猫になっちゃうのかな………
『僕は、君が猫になってくれてうれしかった』
「え……それって……」
黒猫の言葉に、言葉を返そうとした瞬間、すぐ後ろで土を踏む音が聞こえた。
振り返った瞬間、私は言葉を失う。
そこには………見知った茶髪の男子生徒がそこにいたから。
「君、猫と話せるの??」
あの、敦賀湊太が、今私の目の前にいる。この学校で唯一、名前を覚えた人。


