塩河さんが弁当を平らげて少ししてから、私もたまごサンドを完食する。


「さあ、食後のデザートの時間だ!」


 塩河さんがグラスに牛乳を注いだ。


 私はこの時を待っていたと言わんばかりに、〈ボクオ〉を一枚持って構える。


「あーっ!」


 牛乳に〈ボクオ〉を浸けた私は、不本意に手を滑らせてしまった。私の〈ボクオ〉は、グラスの底まで沈没する。


「俺のと替えようか?」


 塩河さんが気を利かせて、グラスをさっと入れ替えてくれた。


「すみません……」


 普段の仕事ではあまりミスをしないのに――塩河さんの前では、なぜかうっかりが目立つ。


 私は気をしっかりと持ち、今度は慎重に、牛乳に〈ボクオ〉を半分ほど浸けてみる。


「あっ、甘い!」


 浸したそれを半分かじると、牛乳とココアクッキー、白いクリームの味が混ざった味が口の中に広がった。それはこないだのショートケーキより甘く感じる。


「美味しいー。ひたひたもいいかも」


 飲み干した牛乳から〈ボクオ〉を取り出した塩河さんは、綻んだ顔をしてそれを口にした。


 塩河さんはいつも前向きだ。そんな塩河さんとの食事は楽しい――またしても甘味に慣れそうもない私は、市販のクッキーを一枚食べることに限界がきてるけど。