塩河さんの提案で、今回は型抜きクッキーを作る。


「じゃーん。ホットケーキミックス。これ一つあれば大体のお菓子作りはまかなえる、実に万能な白い粉だよ」


 塩河さんが言っていたあるものとは、市販のホットケーキミックスであった。


「その白い粉って言い方は怪しいですよ、塩河さん」


 私は指摘がてらに、塩河さんの右腕に軽く触れる。触れた後に気づいたけど、これはもろにボディタッチに当たるな……気安く触って、塩河さんを不快にさせていないだろうか。


「今日はままれちゃんの口に合うよう、お砂糖なしで作ろう」


 私は隣に立つ塩河さんに指示されるまま、常温に戻したバターをボウルに入れ、それを泡立て器で原型がなくなるまで混ぜた。続いて卵黄を入れ、その後ホットケーキミックスを入れて、しっかりと混ぜる。


「生地がちょっとまとまらないから、牛乳を少し入れるか」


 塩河さんが隣から、牛乳を少量加える。それによってか、次第にホットケーキミックスの粉っぽさはなくなってきた。


「よっ、よっ」


 今度は手で生地をこねる。少しして、生地が一つにまとまってきた。


「伸ばすのは力仕事だから、男の俺がやるね」


「お願いします」


 次からの工程は、男の塩河さんにバトンタッチをする。


 塩河さんが腕捲りをし、めん棒で生地を薄く伸ばしていく。白くて華奢な腕に現れる血管に男性的なものを感じ、ややどきりとした。