***


時間が経つのは早いもので 既に夏祭り当日の夕方。


私は未だにベッドの上でのたうちまわっていた。


下から

「唯ー 早く着替えないと浴衣で行けなくなるわよー」

なんてお母さんの呑気な声が聞こえてくる。



あぁ、頭が痛い...


これから陽と二人っきりで祭りをまわるのだ。

緊張しない方がどうかしている。


ただまわるのではない。

特別な夏祭りというシチュエーション。

彼女を置いて なぜか私と。


うぅ...そんなことよりも早く起きなきゃ。

着替えなきゃ。


「お母さーん 今行くー」

「はーい」


私はやっとベッドから起き上がる。


部屋から出て トットット と階段を駆け下りて お母さんの待つリビングへ。



「さっ、可愛く変身しちゃいましょ」

なんて可愛らしく微笑んで お母さんが迎え入れてくれた。



「唯の初デートなんだしね♪」

って、余計な一言も忘れずに。



「別にそんなんじゃないから...」

陽には彼女もいるしね と、私は心の中でさらにつぶやく。


かなり虚しくなった。