すると、入ってきたのはウィリアムだった。薄っすらと汗をかいている。

「突然の入室申し訳ありません!」

平謝りをするとシオンを見た。

「シオン様・・・・!申し訳ございません。ジュリア様が何者かに拐われてしまいました」

ウィリアムは失態をしてしまった自分自身に、もう絶望した顔で報告した。
彼曰く、自分はキッチンとは別の給湯室で、ジュリアがいつでも再び目を覚ました時の為に、お湯を銀のボールに注ぎ、綺麗なタオルをお湯に浸けていた時だった。

「キアァァァァ━━━━━━━━━・・・」

ジュリアの叫び声が辺りに響き渡るその場にいたものは、王太子妃に何かあったのだと騒めき立つ。

ウィリアムはジュリアの叫び声が聞こえた時には、給湯室から飛び出して、寝室の方に向かっていた。