「ね?っと仰られても……」

王太子は愛おしそうにジュリアを見つめていて、視線を逃れるように俯くと、王太子は人差し指と親指でジュリアの顎を掴むと自分の方を向かせ、口づける。

「ん……!」

ポカポカとジュリアは王太子の胸を叩くとハッとし、落ち着く。

(だめよ。王太子殴ったら不敬罪になっちゃう)

無抵抗になったジュリアから唇を離した王太子は、満足そうにまた微笑んだ。
その顔を見たジュリアもまた、俯くと王太子から離れようとジタバタし始める。

「だめだよ?ジュリア、暴れたら怪我してしまう。 私は怪我をした君は見たくない」

王太子の言葉に耳を疑う。

「どうして私の名前を」

王太子はクスリと笑い、大事そうにジュリアを眺めながら髪を撫でながら、ギュっとだきしめた。

「あぁ、自己紹介はまだだったね。僕の名はシオン・ウィングフィールド。君のことはあの日より以前から知っていた。だから怖がらないでほしい」

ジュリアはポカーンと口を開けていたが馬車が王城の前で止まり、シオンはジュリアを抱き上げそのまま降りて王城の中に入ってしまった。