珍しく寝坊したゆずが授業の途中から来て、どうしたの?って聞こうと思ったら……。
「菊哉が全然起きてくれないかったんだもん。あたしが寝坊したわけじゃないからね」
短い髪を綺麗に巻いてるゆずがそう言った。
髪を巻く時間があったってことは、ゆずが寝坊したわけじゃないんだって私にも分かった。
午前中の授業とお昼も終わり昼休みに入った時、ゆずが私の机まで意味ありげな表情でやってきた。
何?
不思議に思った私に『ってかさぁ、』と前置きを置いて話し始めた。
「さっき、会議室に天沢先生と葵が入ってくの見えたんだけど……気のせいかな?」
「…葵が?」
「うん。葵、何かしたの?」
え………葵、何かしたの?
そういえば朝、天沢先生は葵のことを探してたし………。
すると、教室の前の入り口から勢いよく菊哉が入ってきた。
「美鈴!お前今すぐ逃げろ!」
「………」
………は?
何回も言うけど、菊哉っていつも突然なんだよね。
前置きがないっていうの?
いったい何のために逃げろって言ってるのか分かんなくて、慌ててる菊哉を無視してゆずに視線を戻した。
「おいっ!無視すんな!逃げろって言ってんだよ!」
「で、ゆず何だっけ?」
「あー…でねでね」
「意地悪すんな!そんで、ゆずも呑気に話進めてんじゃねぇ!」
ズカズカと私のクラスに入ってきた菊哉は、私の机をバンッと叩いて大声で叫びやがった。
近くで叫ばれた私とゆずは、耳が痛くなったから、耳を押さえながら菊哉をキツく睨んだ。
「なっ、なんだよ!そんな睨まなくったっていいだろ!俺は忠告してやってんだぞ!」
忠告?私に?逃げろって?
「忠告されたって、理由言ってくれなきゃ、何から逃げればいいのか分かんないし」
だいたい逃げろって、どんなことあったら逃げなきゃなんないのよ。
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