慎悟くんが外に出ていってから、1時間くらい経ったんじゃないかと思って時計を見てみると、



まだ30分しか経ってなかった。



でも、私にとっては30分さえも苦痛の時間で、一回も口を開かなかった。



葵に気付いてほしかった。

私がひとりぼっちなことを、気付いてほしかった。

気付かなくてもいいから、

せめて、私の方を見てほしかった。



なのに葵は私の方を一切見ることはなくて、ただ騒いでるメンバーと楽しそうに話してた。



それが寂しくて。

気付いてほしいのに

私の味方でいてほしいのに

信じてるのに




「てか、葵の元カノのりさが葵とより戻したいって言ってたよ」




信じれなくなる。



中学の時に彼女がいるのは知ってる。


でも、詳しくは知らない。


名前も知らない。


何人いるのかも知らない。


何にも知らない。


彼女なのに。


葵の“彼女”なのに。


友達の女の子が知ってることを、“彼女”の私が知らない。



中学が違うってだけで。



私は、広くも狭くもないこの部屋で、ひとりぼっちだった。




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