そらと夏の日

「そらっ」

見ると、そらのお母さんが、必死な顔をしてこちらへ走ってきます。

「どこに行ってたの。なかなか帰って来ないから、心配したじゃない」

お母さんはそらの目の前にたどり着くと、そのままぎゅっとそらを抱きしめました。とても強く、強く、抱きしめました。
そらにはその温もりが、なんだかうみのそれと似ている気がしました。
お母さんはそらの顔を見ると、ほっとしたような顔をします。 そらがここにいることを確かめるように、やわらかな頬に触れました。

「さっきは、冷たい言い方してごめんね。そらも寂しかったのよね。あのね、お母さんね。そらが大きくなったら、言おうと思ってたことがあるのよ。聞いてくれる?」

お母さんの表情は、なんだか心配そうです。そらはひとつ、静かに頷きました。 お母さんはやさしく微笑んで、「大事な話だから、よく聞いてね」と言いました。

「そら。あなたは本当は、双子として生まれるはずだったの。お姉さんだったのよ」

驚くそらの顔を、お母さんはくるしそうに目を細めて、見つめました。そして次に、言いにくそうに、眉を寄せました。

「けど、そらの弟は、産まれる前にお母さんのお腹の中で、死んでしまったの」