絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ど、どうしよう……。

一体なにがどうなって、彼にライバル宣言されたのかはわからない。


ただ、彼は笑顔の下に隠れる牙が、なぜか空気を通してピリピリ伝わってくる。


 何も言えず固まっていたあたし。

「…ほら、禅。いくぞ」

 ようやく呆れたようにいうミカドに反応して、彼は手を解いてくれた。

けれど、すれ違い様につぶやいた一言。


「いい気にならないでね?」


 明らかな敵意に、背筋が凍る。

なのに、ミカドの元へと戻った瞬間、「ごめんね」なんて嬉しそうに笑い声が聞こえる。


 それすらも鋭い彼の視線が突き刺さっているように感じて、あたしの足は根が張ったように動かない。


怖い、と思ったのは久しぶりかもしれない。


「……さっさといけよ、実行委員」


 それは確かに小さい声だったけれど、あたしを動かすには十分な言葉だった。

微かに振り返ると、彼の背中を押すミカドの瞳が一瞬あたしを捕らえる。


そして何もなかったように、ミカドはそのまま背を向けた。



「……助けて、くれた?」


 でも、まさかね。

釈然としないまま、あたしは委員会を思い出して廊下を再び走り始めた。


 あたしとミカドは、勝負中なんだ。

あたしが勝ったら『自由』を。

ミカドに負けたら『服従』を。



 もう、引き返せないんだから!