絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ミカドは、ふっと顔を緩め彼を見た。

こんな表情を見せるのは、紅葉さんだけだと思っていたから…。


「…あの……」

「ああ、ごめんね」

 ミカドにゼン、と呼ばれた彼は、にっこりと笑って道を作ってくれる。

そんな紳士的なことをされたら、憎めない。


「あ、あの!…あなたは、ミカドのお友達なんですか?」


 あたしは何を聞いていしまったのだろう。

けど、とにかくミカドをあんな表情にさせた彼に興味があって。


聞かずにはいられなかったんだ。


 そんな彼はきょとんとした後、なにか思いついたようにミカドに振り向いた。


「帝。もしかして、この娘のこと?」

「………」

 アイツは聞かれても、ぷんとそっぽを向くだけ。

そんな反応にあたしだったらカチンとくるんだけど、彼は苛立ちもせずに、そうかそうか、と一人で納得している。


そして、


「君が愛子ちゃんだね?」

 彼の少し襟足が伸びた髪が、廊下を拭きぬける風でかすかに揺れた瞬間だった。

愛子ちゃん、なんていってくれるのは、皇さまぐらいだったから。


妙な期待が膨らみそうな瞬間、彼は笑った。



「僕の、ライバルだ」


 言葉とは相反する笑顔。



「……はい?」


 ぎゅっと握られた手の圧力に、あたしは冷や汗が止まらなかった。