絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 そっと抱え込んだミカドの頭に、あたしも少しだけ寄りかかる。

ほんのり白い花の残り香がした気がした。


 なぜだか、あたしまで悲しくなってきてしまう。

とくり、と雨の中にいるみたいなきもちのあたしに、腕の中にいたミカドは小さく呟いた。


「……じゃあ、慰めろよ」


 ─────え…?

 聞き返す暇もなく、あたしの視界はぐるりと百八十度反転し、代わりに上質な柔らかさが背中を包む。


 目の前には、照明を背負ってより美しくみえる輪郭を強調させたアイツ。

けれど、その中心には戸惑いがゆれる切れ長の瞳。


 あたしが知っている、強いものではなかった。


「…ねえ。それは、アンタが───帝が望んでいることなの?」


 アンタの本心、どうしてか伝わっちゃってるよ?


「……そうだよ」


 ウソつき。

はあ、とため息を零し、あたしは覚悟と切なさをお腹に刻み込む。


「なら、好きにすればいいわ。所詮、あたしは“使用人”よ」


 あたしはすっと瞳を閉じて抵抗しなかった。

これからどうなっても、あたしは今すべきことをしているんだ。


 そう思うことで、今まで仕事をしてきたんだ。

そりゃあ、ソイウコトは好きな人と……とは、夢見てた。


でも、今のアイツをわかってあげられるのは、きっとあたししかいないんだ。



 太い指がそっと喉に触れた瞬間だった。


「……んだよ、その言い方」