絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 翌朝は、なぜかスッキリ目が覚めた。

真夜中の出来事が、どこか夢であったかのように。



『お前は、“あいつ”とは大違いだな』


 寂しそう…ううん、けれど嬉しそうでもない。

不思議な感情がこもったアイツの声は、やっぱり頭の隅にあったけど。


振り払うようにあたしは朝を迎えた。



 使用人たちの朝食を終え、これから一日の業務が始まろうとしていたときだった。

「ふぁ……」

 ピンク色の唇がかわいく開いたのを、白い手で押さえながら欠伸を零した紅葉さん。

あたしは驚いた。


「珍しいですね、紅葉さんがあくびなんて」

「えっ?そう、かしら?」

 眉をハの字にしながら小首をかしげていた姿も、あたしには真似できないほどカワイい。


 きっと、本でも読んで夜更かししたのだろう。

けど、いつもよりシャキっとしない様子は、なんだかあたしまで心配してしまう。


 紅葉さんにはあの庭園のことも聞いてみたかったのだけど…

「…くぁ……」

 また更に小さな欠伸を連発する紅葉さんに、諦めた。

おそらく彼女より理解しているだろう主任に聞いてみればいいし。


「紅葉さん、先にアイツの部屋へ行っててください!」

「ええ?愛子さんっ?」

 紅葉さんの慌てた声を振り切って、あたしは足早に広間から階段を駆け上がる。

ちょうどそこには、書類を見ている主任の後姿。


「あ、主任っ」