絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 柔らかい絨毯を見つめながら、アイツの踵を追うのが精一杯。


「アンタの、部屋までいけば……道、わかるもん…」


 多分、こういえていたと思う。


 何度も何度も目を擦って。

 意外とゆっくりとした足取りのアイツが、階段を上っていく。

あたしもあくびを何度もなから追い掛けて。


そして、しばらくしてぴたっと止まったのは覚えている。


だから、あたしはそのまま自分の部屋に戻ろうと歩き出したんだ。


 あの感覚は、きっと『使用人』という仕事が身体に染み付いてきた賜物なのかもしれない。


アイツの部屋に着いたのだ。



 キイ、と背後で扉の開く音。

足元にはうっすらと細い光があたしの影を作っていた。



 ───オヤスミ、ミカドさま。


そんな風に、ココロの中で馬鹿にしていたあたし。


まどろんでいたはずなのに、次に聞こえてきたのは、酷く脳内を響かせる声だった。


カラダの芯まで痺れさせ、ずうっと体内をこだまするような……

毒と危ない香りがする甘美な声。



「お前は、“あいつ”とは大違いだな」



 睡魔と必死に戦っていたから、その言葉が夢か現実かわからなかった。


けれど。

無事にあたしの部屋に辿り着いても、布団に埋もれていても。



 アイツの最後の声が、頭の中から消えることはなかった。