絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 キッと睨んだのに、アイツはいつもと違って視線を庭園に外す。

その小さな光が照らしだす端正な横顔は、なんだか切なかった。



 だから、あたしは……


「………きれい、ね」


 夏も終わり、涼しくなりはじめたこの季節。

夜中に薄着で出歩くのは少し肌寒い。


 ひんやりとしながらも、柔らかい絨毯が敷き詰められた廊下。

ゆっくりと踏みしめ、アイツとはガラス二枚分を挟んだ反対側に足を運んだ。

そして、光が照らし出す庭園とあたしたちを隔てるガラスにそっと触れた。


 思った以上に、それは冷たくてビックリしてしまった。

それさえも承知で、きっとアイツも手を突いて見つめていたんだ。


 アイツはそれ以上何も言わなかったし、あたしもなんだか憎まれ口をたたく元気はなかった。



 まるで夜光虫みたいなあたしたち。


しばらくぼーっと見ていたら、思い出したようにウトウトと眠気が襲ってくる。


 目を擦り、でももう少しみていたい、とも思っていたのだけど。

あたしの一人での戦いを終わらせたのも、アイツだった。


 ため息を僅かに交えて何も言わずに踵を返すのを、視界の端で捕らえ、だからあたしも無言でついていった。


 その道中、ずっと考えていた。

 絵の通り来たはずなのに、なんで道がわからなかったのか。

──なんて、どんなに思考を巡らせても思い出せず、ひたすらベッドを恋しがっていたあたし。



「……ついてくんなよ」


 ぶっきらぼうな背中越しのアイツの言葉も聞き流すほど、その時のあたしは本当に眠くて仕方なかった。

冷たいアイツの言葉も相手にすらできないくらいに。