基本的に真夜中に仕事はない。
まあ、晴海さんや主任はあたしたちなんかよりも遅くまで仕事をしているのだけど。
その二人も、さすがにこんな深夜には出歩かない。
「ご、ごめんなさい!道に迷ってしまって……」
慌てて素直に腰を折る。
いつもはぐるりとまとめあげられた毛先も一緒になって頬を掠めて揺れた。
「…お前……」
頭の先から降ってきたその驚いた声音に、あたしもピンときた。
「……ミカド?」
顔をあげるとそこには薄い長袖に軽いスラックスだけの姿で、白い光が漏れるガラスを背にしていたアイツ。
意外だ。
なにがって、こんな素敵な場所があることも、そこにアイツがいたことも。
そして相変わらず、切れ長の目を細め強い視線で一瞥してくる。
「何、してんだよ」
やはりいちいち腹立たしい口調に聞こえるのはあたしだけだろうか。
けれど、あたしだってこんな真夜中にケンカなんてしたくない。
ため息混じりに、腰に手を当てて答える。
「言ったじゃない、道に迷ったって」
堂々と言えることではないけれど、むしろこんな広い屋敷を小さな脳みそにたたき込むほうが困難だ。
威張ったあたしに、アイツはふん、と鼻をならす。
「……お前、馬鹿そうだもんな」
「ど、どういう意味よっ」
まあ、晴海さんや主任はあたしたちなんかよりも遅くまで仕事をしているのだけど。
その二人も、さすがにこんな深夜には出歩かない。
「ご、ごめんなさい!道に迷ってしまって……」
慌てて素直に腰を折る。
いつもはぐるりとまとめあげられた毛先も一緒になって頬を掠めて揺れた。
「…お前……」
頭の先から降ってきたその驚いた声音に、あたしもピンときた。
「……ミカド?」
顔をあげるとそこには薄い長袖に軽いスラックスだけの姿で、白い光が漏れるガラスを背にしていたアイツ。
意外だ。
なにがって、こんな素敵な場所があることも、そこにアイツがいたことも。
そして相変わらず、切れ長の目を細め強い視線で一瞥してくる。
「何、してんだよ」
やはりいちいち腹立たしい口調に聞こえるのはあたしだけだろうか。
けれど、あたしだってこんな真夜中にケンカなんてしたくない。
ため息混じりに、腰に手を当てて答える。
「言ったじゃない、道に迷ったって」
堂々と言えることではないけれど、むしろこんな広い屋敷を小さな脳みそにたたき込むほうが困難だ。
威張ったあたしに、アイツはふん、と鼻をならす。
「……お前、馬鹿そうだもんな」
「ど、どういう意味よっ」


