かれこれ住み込み始めて、意外と時間は経っている。
けれど、まだ屋敷の仕事も含め、仕組みを覚え切れていないあたしは、油断するとこうして屋敷内で迷ってしまう。
だから、あたしはなりの目印を付けていた。
「あったあったっ、食器の絵!」
この屋敷の廊下には、たまにだけれれどあたしの部屋にあったものと同じ油絵が飾られている。
間取り図とかややこしい文字は覚えられなくても、この淡くてほんの少し淋しそうな色使いの絵は、どうしてか忘れられなかった。
「ここの“楓”の絵を曲がると……」
あたしの部屋につながる階段があるはず。
頬を緩ませ、角をぱっと覗き込む。
なのに……
「あれれ?」
どこをどう間違えたのか、白い光が目の前には溢れていた。
正確にいうと、そこだけ夜の闇から切り離されたように照らしだされていたガラス張りの小さな一角。
「うわぁ、こんな素敵なところがあったなんて……」
まるで秘密の花園。
ガラスの向こうには白い花で溢れており、まだ蕾のものやただ儚げに咲き誇る花弁が月明かりを受けている。
さながら月夜から浮き出したような小さな庭園は、静かに輝いていた。
あたしはその美しさゆえの引力に逆らうことも出来なくて、ひたひたと歩を進めた。
すると、かさっとなにかが動いた音とともに響いてきた。
「誰だっ」
けれど、まだ屋敷の仕事も含め、仕組みを覚え切れていないあたしは、油断するとこうして屋敷内で迷ってしまう。
だから、あたしはなりの目印を付けていた。
「あったあったっ、食器の絵!」
この屋敷の廊下には、たまにだけれれどあたしの部屋にあったものと同じ油絵が飾られている。
間取り図とかややこしい文字は覚えられなくても、この淡くてほんの少し淋しそうな色使いの絵は、どうしてか忘れられなかった。
「ここの“楓”の絵を曲がると……」
あたしの部屋につながる階段があるはず。
頬を緩ませ、角をぱっと覗き込む。
なのに……
「あれれ?」
どこをどう間違えたのか、白い光が目の前には溢れていた。
正確にいうと、そこだけ夜の闇から切り離されたように照らしだされていたガラス張りの小さな一角。
「うわぁ、こんな素敵なところがあったなんて……」
まるで秘密の花園。
ガラスの向こうには白い花で溢れており、まだ蕾のものやただ儚げに咲き誇る花弁が月明かりを受けている。
さながら月夜から浮き出したような小さな庭園は、静かに輝いていた。
あたしはその美しさゆえの引力に逆らうことも出来なくて、ひたひたと歩を進めた。
すると、かさっとなにかが動いた音とともに響いてきた。
「誰だっ」


