絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 あたしの野心が燃えたぎっているところに、小町は苦笑いを浮かべて伺ってくる。

「そういや、愛子。バイト先変えたんだってね? 風間先生が驚いてたよ」

 ふと冷静になり、小町には何も話していなかったことに気づく。

なんて説明しようか、いや、どう説明していいかもわからない。


もう少し、あたし自身が落ち着いてから改めて報告しよう。


「あははは、まぁね〜」

 乾いた笑いでごまかそうとしたのだけど、小町何かを思い出したように続ける。


「確か、奨学金制度を推奨してる委員会って、あの藤堂家が全面バックアップしてるんだよねぇ?」


 軽くパーマがかかった赤の混じった毛先は、無邪気にあたしの度肝をぬくようだ。

「……へ?」

「なんだっけ、さっきの藤堂帝の兄弟。 ……あ、書類持ってる?」


 唸る小町に急かされるように、実はまだ提出していない書類をカバンから抜き取る。

複写式のそれは、主任と皇さまの捺印がされており、あとはあたしの署名で完璧だ。


「ああ、ほら」


 小町の顔に似合わず太い指で示された書類の右上。

日にちの下に奨学金を管理する委員会の名前が記されている。


しかし、印刷されている文字にあたしは絶句した。


 ──ウソ…。


「こ、皇さまの名前……?」

 さすが藤堂家の財力は違うなぁ、なんて小町はのんきに感心してる。

あたしには、それどころじゃなかった。


 そこにははっきり、『聖英高校教育奨励推進委員会』と記載され、彼の肩書きは“委員長”という立派なコトこの上なかった。



それはあたしに、イケナイ恋をしている……そういっているみたいに見えてしまったんだ。