絶対主従関係。-俺様なアイツ-

 ……は…?

思わず、すっとんきょうな声が出てしまいそうだった。


標本にされてしまいそうな一直線の瞳のまま、ミカドは続ける。


「皇はやめておけ」


 その瞬間、あたしはドキリと図星を指されたように肩が震える。

何を意味するのか、うっすら分かってしまったから。


「……な、なにがっ」

「別にお前が泣こうが喚こうが構わないんだが、業務に支障がでたらこっちが迷惑だし」


 どうしてコイツにバレてしまったんだろう。

それだけが悔しいのに、余計な一言・二言で、更に倍増。


「あんたなんかに関係な……っ」


 食ってかかろうとするあたしは、きゅうっと再び、ミカドの瞳に捕らえられる。

それと同時だったかもしれない。


 生温かい吐息が、口内を広がって言葉を塞いだ。

呼吸すらも忘れそうな温かさで、視界に飛び込んでくる閉じられた瞳は魅惑。


遠くで人の話し声が聞こえるのに、その感触がカラダをじわりと支配していく。

「……んんっ」


 一瞬、水になってしまったのではないか。

そんな錯覚さえ覚えてしまいそうなあたしから、ようやく離れたミカド。


絡まった熱が少しずつ冷やされていく中、ミカドは釘を刺すようにもう一度、柔らかい唇を開く。






「皇は、やめておけ」




 宣戦布告にも似た、アイツの忠告だった。

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