「こ、皇さま、本当に誤解ですからーっ!」
彼の謝った認識を解くのに精一杯だった。
車が学校に着くと、晴美さんが後部座席のドアを開けてくれた。
大きな欠伸を一つして、アイツはすたすたと行ってしまう。
「愛子ちゃん、どうぞ?」
レディファーストというやつなのか、皇さまはあたしから先に出るよう促してきた。
あれだけ大笑いしておいて、紳士的なコトされたら、心臓はどくんどくんと振り回される一方。
「いってらっしゃいませ」
晴海さんにお辞儀をされ、あたしも慌ててお辞儀を返す。
車はあっという間に校内を抜け、続々と集まる車用送迎広場を後にした。
まさか車で登校することがあるなんて、これっぽっちも思ってなかった。
まるでお姫様のようなひと時は、皇さまで閉められる。
「じゃあね、愛子ちゃんも勉強頑張って」
天使のような笑顔に、胸もキュンと嬉し泣く。
「はい、皇さまも!」
校舎前で別れたあたしは、その優しさをかみ締めるように昇降口へ歩き出す。
そして、社内での苛立ちを思い出し、復讐を誓う。
みてなさい、藤堂帝〜っ!
ドスンドスン、と今にも足音が響きそうになりながら、あたしは廊下を踏みしめる。
もう見慣れた教室の扉を開くと、教科書とノートをにらめっこするあたしの友達。
「あれ、愛子? はやいね?」


